2015年12月24日木曜日

2学期終業式 式辞

今日は大変暖かい終業式となりましたが、冬至が来て今は一年で最も陽の光の少ない時期です。今からだんだん日が伸びていくので、古代には冬至が一年の始まりでした。「一陽来復」という言葉があります。陰が極まって陽に転ずることで、冬至ひいては新年のことを著します。この意味から、冬の年中行事は火祭りの形をとるものが多いようです。冬至に柚子湯に入られた方もいると思います。冬至の日に風呂に柚子を入れて入ると体が温まり風邪知らずになるとか、この習慣は冬至と湯治の語呂合わせからとも言われていますが、かつては一年の始まりであった冬至に、柚子の香りや薬効で体を清める「禊」の意味があったといいます。

 さて、今年2015年は皆さんにはどのような年であったでしょうか。私自身は平和ということについて繰り返し考えさせられた年であったように思います。1月にはフランスでシャルリー・エブドという新聞社などが襲われる連続テロ事件がありました。また、過激派組織『イスラム国』で捕まった日本人ジャーナリストらが殺害されるという事件が起き、何も悪いことをしていない日本人が平然と殺される地域が世界にはあるのだと慄然としました。昨日も、日本人ジャーナリストがシリアで武装勢力に拘束されていると報道があったところです。4月には天皇がパラオを訪問され、戦争の慰霊碑に供花等をなされましたが、珊瑚礁で囲まれて綺麗なパラオの海には今も無数の不発弾が沈んでおり、今日も技術を持った元海上自衛隊員がその処理に従事している事を知りました。70年たっても、まだ不安が取り除けないでいる事実に驚くとともに安全を回復するのは大変なのだと改めて知りました。また、国会では集団的自衛権を一部行使出来るようにする法案が議論され、世論も大きく割れたようです。現代の平和のための体制とはいかようなものであるのか、日本はどういう道を目指せばよいのかを考えさせられました。11月にはフランスで連続テロ事件が起こり、平和な普通の暮らしが一瞬のうちに壊されるということが起きました。首謀者とみられる過激派組織「イスラム国」自体をアメリカもロシアも攻撃していますが、いまだに勢力を保っています。

 現実の世界は激しく動いており、私達の国の仕組みも大きく変わっています。日本や世界で起こっている事柄について常に関心を持ち続け、何が正しいかについてよく考え続けることが大切です。
 しかも、これからは18歳から選挙権があるということで、たちまち来年夏の参議院選挙では、18歳に達した人は有権者となります。政治に対して影響力を行使する資格を有することになるわけですから、今まで以上に報道されていることについて関心を持ち、自分の意見を醸成していって欲しいと思います。

 さて、明日からは冬休みです。冬休みは家庭の行事が多く、慌ただしいかもしれません。一方で寒く夜が長いこともあって集中しやすいと感じる人も多いでしょう。3年生は多くの皆さんがセンター試験に向けて最後の追い込みということになります。着実に実力もついてきているようです。桜井高生はこの時期によく力が伸びます。まとまった時間が取れるので、上手に気分転換もしながら頑張ってほしいと思います。進路が決まっている諸君は落ち着いた正月を迎えることと思います。しかし、大学入試は団体戦です。自分がやるべきことにじっくり取り組み、また桜井高校としての入試に向けた雰囲気作りにも貢献して欲しいと思います。1・2年生の皆さんは、自分の来年、再来年の姿がそこにあるわけですから先輩の様子をよく見て、それぞれ勉強に部活動に頑張ってもらいたいと思います。
 
 明治大学の教授で『声に出して読みたい日本語』などの著書のある齋藤孝さんは、テレビのコメンテーターの仕事もしています。テレビといいうメディアは講演や授業と違って時間の制約がとても多い。もっと長い時間、話したいしジョークも言いたい。でも思いどおりには出来ない。だから、最初は不完全燃焼だったそうです。しかし、ある時気付きます。テレビにはテレビのルールがあると。時間の制約もそうだし、求められる役割もある。ジョークを言うのは私ではなく、お笑い担当の芸人さんだろうと。そのことに気づいてから、随分物事が好転し始めたそうです。
 それぞれ求められていて、期待された役割がある。私たちはついつい他のことにはあれこれ口出しをしがちですが、では自分はどうか。自分が今求められていることを優先するのが大切である。このことは私も含めて多くの人に当てはまるのではないでしょうか。


 皆さんそれぞれが健康で充実した冬休みを過ごされることと、ご家族とともに良いお年を迎えられることを祈っております。