2015年7月17日金曜日

1学期終業式で話したかったこと

1学期に終わりにやってきた台風11号は、終業式を吹き飛ばしてしまいました。また、国会では日本の安全保障の仕組みを大きく変える法案が衆議院を通過しました。この2015年の7月は、皆さんが大人になった後で、記憶に大きく残る時となるかもしれません。
 皆さんのこの1学期の過ごし方はどうだったでしょうか。皆さん一人ひとり、4月から今までの自分の過ごし方を振り返ってもらいたいと思います。区切りでしっかり考えるのは大切なことです。なぜなら、よく考えることは自己変容につながるからです。人間は意識することによって、自分を変えていくことができます。自分で自分を律すること、ドイツの哲学者カントはそこに人間の尊厳を見出しました。しかしそのような意志の力を生ずるには、よく考えることが不可欠です。
 さて、区切りの時に当たって、自分についてよく考えることは大切です。今日は、それだけでなく、自分をとりまく社会について考えることの大切さについてお話しします。
 皆さんは今、人生の中で大変多感な時期を過ごしています。物事を柔軟にとらえて深く感じることができる時です。そのようなときにいろんなものを見て、聞いて、話してみてほしいと思います。むつかしい社会問題になると「見ざる、聞かざる、言わざる」を決め込んでいる人が多いように思います。これではだめだと思います。いろいろむつかしい問題についても、一面的な解釈で済まさずに、いろんな視点からじっくり考えることが大切だと思います。マスメディアでは、この頃は「はっきりものを言う」人物がもてはやされる傾向がありますが、もちろん大切なのは言っている内容です。ヒトラーはずいぶんはっきりと明快に話していました。とにかく、じっくり考えること。自分の頭を使わずに楽をしているばかりでは、私たちをとりまく本当の世界は見えてきません。
 イタリアの映画監督で、小説家のピエルパオロ・パゾリーニはこう言っています。
「消費社会は民主主義をどんどん破壊していくだろう。新しい『モノ』を手に入れるごとに、それと引き換えに、民衆は自由を失っていくだろう」
 確かに自分をとりまく社会について自分の頭で考え、行動するのは大変なことです。それより、おいしい店に行って人気料理を食べるとか、おしゃれな店に行ってショッピングするほうが楽しいに決まっています。日本のような高度消費社会では、そのような楽しみはすぐ手近にあります。でもやはり、それだけではだめなのです。自由は、私たちが「モノ」中心のライフスタイルに慣れ、「どう生きるべきか」を考えるのをやめたときに、消えてなくなるのです。自由がなくなった社会がどんなに悲惨なものかは、世界の様々な独裁国家を見ればすぐわかります。
 これから先、皆さんも20歳になり、40歳になり、60歳になっていきます。その時の社会が、今よりも少しずつでもよいものとなるよう、努めてもらいたい。

 今から長い夏休みが始まります。この時期は戦争や平和についても大きく報道される時です。それも私たちの考えるべきことの一つだと思います。皆さんにはぜひ、自分をとりまく社会のことを、さまざまな角度から、受け身でなく、自分から能動的に考えていく姿勢を養ってほしいと思います。

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